vol.1 海洋散骨とは月イチ連載「村田ますみのブルーオーシャン終活コラム」

Vol.1「海洋散骨とは」

  • 左から「散骨の様子」「合掌の様子」「散骨後の様子」

海洋散骨は、祭祀の目的をもって、故人の火葬したあとの焼骨を海洋上に散布することをいいます。
(一般社団法人日本海洋散骨協会 ガイドラインより)

 

 「私が死んだら遺骨は海に撒いて欲しい」
近年、このような希望をよく耳にするようになりました。

 ひと昔前までは、人が亡くなり火葬された後は、墓地に埋葬されるのが当たり前でしたが、さまざまな背景・事情から、遺骨を自宅に置いているケースや、海への散骨、継承者を必要としない永代供養墓など、遺骨の行き先は年を追うごとに多様化しています。なかでも海洋散骨は、「自然に還る」「自由になれる」といったイメージも手伝い、選択肢として考える人が増えています。

散骨が増えている背景

 故人が亡くなるとお墓に埋葬するのが当たり前のように考えられていますが、一部の貴族階級を除き日本人は古来より亡骸を火葬して山や海に撒き、自然に還すという考え方が一般的でした。現在のように家族がひとつのお墓に入る風習は明治以降に広まった方法であり、ここ100年ほどに始まった新しい習慣といえるでしょう。
 最近になって、こうしたお墓に入るという固定観念から自由になり、人間が生まれた本来の場所である自然に還りたいと考える人も多くなりました。
 現代社会における核家族化・少子化の進展により、特に都市部において、お墓の維持・取得に関わる問題・不安を抱えている人は多く、海洋散骨という方法は、そういったニーズにあっているとも言えます。また、自然環境保護への関心の高まりにより、野山を切り開いて墓地を作るよりは、遺骨を自然に還し、また故人の眠る自然環境を大切にしていこうというエコロジー思想も背景にあります。
 
さまざまな散骨の方法とその流れ
 
 散骨のセレモニーは実際にはどのように行われているのでしょううか?海洋散骨は、葬送儀礼としての歴史は浅いため、行う側の自主的な方法に任せられているというのが現状です。
 しきたりがまだ確立されていないとはいえ、散骨は、あくまでも「葬送のための祭祀のひとつとして節度をもって」行われるべきものであり、そこには死者の尊厳がきちんと守られるような儀式が存在しなければなりません。
 
散骨において、宗教・宗派を問わず、最低限これだけは行いたいというポイントを紹介します。
 
① 献花
 
 死者に花を手向けるという弔い方法は、ネアンデルタール人も行っていたという調査報告があります。遺骨と一緒に撒き、水面に広がる色とりどりの花は、とても美しく、印象に残ります。
日本海洋散骨協会では、地球環境に配慮するために、花は茎から花弁をはずして撒くことを推奨しています。
 
② 黙祷、手を合わせる
 
 信仰に関わらず、故人のために静かに祈る時間を設けましょう。合掌という行為は、仏教に由来するといわれていますが、海洋散骨でも、死者への弔意を示すときに多くの人が自然に手を合わせる光景がよく見られます。
船上で黙祷するときは、他船の引き波などで船が急に揺れることもあるため、安全には細心の注意が必要です。
 
③ 散骨した場所を旋回
 
 海洋散骨では、散骨終了後、散骨した場所を中心に船が旋回をしてから帰航するというのが慣例となっています。旋回している間が、その場を離れるまでの最後のお別れの時間となります。旋回する回数は、3周というのがもっとも多いですが、そのときの海況によって旋回が困難な場合もあります。
 
④ 号鐘と汽笛
 
 船上でのセレモニーなので、船に備え付けられている備品を効果的に使用します。号鐘(マリンベル)は、時報を知らせたり霧中の衝突防止のために鳴らすために船に搭載が義務付けられている法定備品ですが、船上セレモニーで使用されることも多くあります。黙祷の時に鳴らしたり、散骨をしている間にゆっくり鳴らすなど、使い方はさまざまですが、鐘を鳴らすことで、その場が神聖な雰囲気になります。そして、船が散骨ポイントを離れる際には、船長と相談して汽笛を鳴らしてもらうと良いでしょう。船が汽笛を鳴らしながらゆっくりとその場を離れると、いよいよお別れだということが参列者にも伝わりやすいです。
 他に、献酒や献水で海を清めたり、挨拶の言葉を入れる、手紙を読む、お経や賛美歌など宗教儀礼を取り入れるなど、さまざまなアレンジを加えていくことが可能ですが、注意しておきたい点がひとつあります。
 それは、「船は停まると揺れる」ということです。船の大きさやその日の海況にもよりますが、散骨ポイントで停泊すると、走行している時よりも揺れを感じることが多いため、散骨ポイントでいろいろなことをおこなおうとすると難しかったり、時間がかかって船酔いしてしまう危険性もあるということを考慮に入れておきましょう。
 
散骨のスタイル
 
 ひとことで海洋散骨といっても、さまざまなスタイルがあります。ここでは、代表的な海洋散骨のスタイルを紹介します。
 
① チャーター散骨
 
 船を一隻貸し切るもっともポピュラーなスタイルです。
出航から帰航まで、海域にもよりますが、1時間から2時間くらいのことが多いです。散骨ポイントに到着するまでは、船内やデッキで自由にくつろいで過ごし、散骨ポイントに着いたら、黙祷、散骨、献花など一連のセレモニーで故人を海に還します。
 
② 合同乗船散骨
 
 一度に数組の遺族が乗船し、乗り合いで行う散骨の方法です。あらかじめ出航の日時が指定されていますが、船を一隻チャーターするよりは、費用を安く抑えられるというメリットがあります。散骨ポイントでのセレモニーは、一組ずつ行うケースと、合同で行うケースがあります。
 
 ③ 代行委託散骨
 
 依頼者が散骨に立ち会わず、遺骨を預けて散骨を依頼する方法です。船に乗らずに代行散骨を選ぶ方には、船に乗れないさまざまな事情があります。船や海が苦手という方もいれば、高齢で体力的に自信がないという方もいます。散骨する海から離れた場所に住んでいるため、行くことができないという方もいます。また経済的な理由ということも多いです。
 故人の遺骨に対して、「預けるので後はよろしく」というような大変ドライな価値観を持っている人もいますが、遺骨を手放すことに何らかの感情を示す方も多くいます。ブルーオーシャンセレモニーでは、代行散骨を選ぶ方にも、桟橋までのお見送りをご案内したり、出航前に電話を入れています。
 どのようなプランを選択したとしてもご遺骨の尊厳は守られなければなりません。
 
④ メモリアルクルーズ®
 
 散骨証明書に記載された緯度・経度の地点まで再び向かい、献花をして故人のために祈りを捧げます。命日や、年回忌などの節目の時期に行われることが多いようです。
 船を一隻チャーターして行われるケースと、あらかじめ日程が決まっていて募集を行う、合同乗船によるメモリアルクルーズ®があります。

 

次回タイトル:「海洋散骨は違法?合法?グレーゾーン?散骨と法律について」

 

<村田ますみ氏プロフィール>
株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役社長
一般社団法人日本海洋散骨協会 初代理事長
GSI認定グリーフサポートバディ・フューネラルセレブラント
【経歴】
1973年生まれ、東京都出身。
同志社大学卒業後、IT業界、生花流通業を経て、母の死をきっかけに
2007年に株式会社ハウスボートクラブを設立。
2014年に一般社団法人日本海洋散骨協会代表理事に就任。
2015年に日本初の終活コミュニティカフェ【BLUE OCEAN CAFE】をオープンし、終活のトータルサポートを本格的に開始。
終活セミナーの講師としても活躍(年間60回程度)。
【著書】
「お墓に入りたくない!散骨という選択」 朝日新聞出版(2013年)
「海へ還る 海洋散骨の手引き」 啓文社書房(2018年)
【Webサイト】
海洋散骨のブルーオーシャンセレモニー
ライフコミュニティカフェ「ブルーオーシャンカフェ」

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