上智大学教授 上智大学グリーフケア研究所 所長島薗 進さん

島薗 進さん

1948年、東京都生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒業。東京大学文学部・大学院人文社会系研究科宗教学・宗教史学研究室教授を経て、2013年から現職。主な研究領域は近代日本宗教史、死生学。『精神世界のゆくえ』『<癒す知>の系譜』『スピリチュアリティの興隆』『宗教学の名著30 』『国家神道と日本人』など著書多数。

 

私の「エンディングノート」

Q.人生の最後に食べたいもの(最後の晩餐)
ご飯
Q.人生最後に行きたいところ
美しい日本の自然が感じられるところ
Q.天国に持っていきたいもの
生まれてきたときの心
Q.天国で会いたい人
両親
Q.生まれ変わったらなりたい職業
芸術家

 


自分なりの死生観を持つ

なぜ今、グリーフケアが必要とされるのか

宗教学と死生学の研究者であり、上智大学グリーフケア研究所所長でもある島薗進さんは、近年グリーフケアに関心を持つ人が増えている理由について、以下のようにみている。
「グリーフ(悲嘆)とは、愛する家族や親しい人を亡くした後に体験する、複雑な情緒的な状態をさします。かつての日本には親族や地域に濃密な人間関係があり、その人たちと喪失の悲しみをともにし、喪の儀式をともに営むことでしだいに立ち直っていく、喪の文化がありました。ところが今は、そのような文化が身近なものではなくなってしまっています」
今の日本人は、親戚縁者や地域との関係が希薄で、なおかつ昔ながらの宗教観をそのまま受け入れることに抵抗感のある人が多い。しかも、昔ならば地域の民俗行事などを通して自然に身についた喪の文化が身に付いていないために、いざ死に向き合うと、どうしたらいいかわからなくなってしまうのだ。
「このような状況は四半世紀を隔てた2本の映画、1984年の『お葬式』と、2008年の『おくりびと』を見比べてみるとよくわかります。『お葬式』は、初めて葬式を出すことになった一族の戸惑いをコミカルに描いた作品ですが、なんでこんな面倒くさいことをやらなきゃいけないんだ、という気分がよく出ています。親戚縁者が群れていて、絆がしがらみになっていて、生命力があって暑苦しい。
ところが『おくりびと』になると、商店街はシャッターが閉まり、銭湯は廃業の危機にあり、主な登場人物はいずれも単身者です。どんどん横のつながりが減っていって、孤独が強まっている。そして、孤独なだけに、少ないつながりがすごく重い。その絆があるかないかでは、全然違う。だから、その絆が切れると、とても孤独になってしまうのです」
かつては周囲の人々と分かち合うことができた悲嘆を、誰とも分かち合うことができないために、絆を失った人はより一層孤独になってしまう。だからこそ、グリーフケアに関心が集まり、第三者によるケアが求められるというのが、現在の状況だ。

死生観は文化と不可分であり自分の経験に即したもの

悲嘆をともにする仕組みを失うと同時に、私たち現代人は、地獄極楽や輪廻転生といった従来の宗教観や儀式を、そのまま受け入れることができなくなっている。しかし、では何も要らないのかといえば、そうではない。
「儀礼が煩わしいので抜け出そうとする面と、それでは空っぽだからと別の何かを求める面と、両面ある。戦後は抜け出す方向へ来たのが、今は戻る方向にあると言っていいでしょう。
本当にこれでいいのか、何か必要なんじゃないのか、ということが意識され始めたのは60年代で、欧米で起こったホスピス運動が、70年代に日本にも入ってきます。一方では、宗教学者の岸本英夫や詩人の高見順のように、死を意識し、死生観を綴った文芸作品を書く人が現れます。
もちろん、死をテーマにした作品は古来たくさんありますし、死を意識した物書きも大勢います。しかし、致死的ながんを宣告され、病苦と闘いながら、死に直面して生きる生について語った人は、それまでいなかった。これが共感を呼び、多くの人々が死生観について考える時代の先駆けとなったのです」
自分自身が死に向かって歩き、死に直面する。あるいは死者を送り、傷んだ心を慰める。そのようなプロセスすべてに、一人一人が取り組まなければならない、言い換えれば、自分なりの死生観を持たなければならない時代に、私たちは生きている。では、自分なりの死生観を持つには、どうすればよいのだろうか。
「死生観は自分の経験に即したものであると同時に、文化と不可分なものですから、過去の日本人がどのように死を受け止めて来たかを知ることが、参考になると思います。その意味で、死生観と結びついた文芸作品を読むことは、大いに力になります。
また、たとえばお墓参りに行って手を合わせたときに、これはどういう意味だろうか、自分はなにを思って手を合わせているのだろうかと、考えてみる。あるいは、黙祷にはどういう意味があるのか。普段から、そのようなことを考えておくといいと思います」


書籍紹介

『日本人の死生観を読む 明治武士道から「おくりびと」へ 』
映画「おくりびと」を始め、明治の武士道、宮沢賢治の童話、柳田国男や折口信夫の民俗学、吉田満の『戦艦大和ノ最期』、高見順の詩などを通して、日本人の死生観を読み解いていく。先人たちの想いに触れながら、現代を生きる私たちに、死と生への新たな向き合い方を提示する。
朝日選書
定価1400円

 


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