ヨガ、写経…お寺でワークショップ/八戸・普賢院

「日常の中にある『ひととき』を充実させるための、心の持ち方を伝えたい」。八戸市豊崎町の真言宗豊山派寺院「普賢院(ふげんいん)」(品田泰永住職)は昨年から、ヨガや写経などを体験しながら仏道に親しむ「寺子屋ワークショップ(WS)」を寺院内で開いている。仏道とは仏教の教えのことで、示唆に富み、人生の歩むべき道を照らす。WSを企画する副住職の品田泰峻(たいしゅん)さん(31)充恵(みちえ)さん(32)夫婦は、宗教や宗派を問わず幅広い世代に参加を呼び掛けている。
暗闇の中、灯明の柔らかな光が揺れる普賢院本堂。8月28日夜、寺子屋WSの一環で「お寺ヨガ~キャンドルナイト」が行われた。泰峻さんはヨガの前に法話を行い、ヨガは仏道の瞑想(めいそう)法の一つであること、灯明は仏の知恵の象徴で悟りや安寧を意味する-と説明。参加者17人に「日常を離れ、心安らぐひとときをお過ごしください」と語りかけた。
泰峻さんと充恵さんは同市内の高校の同級生で、東日本大震災前の2011年に結婚。泰峻さんは都内の寺院で修行していたが、同年秋に帰郷した。寺子屋WSは「自分たちができる範囲で、仏道に誰もが気軽に触れられる場をつくりたい」と、帰郷前から2人で温めていた企画だった。
14年9月、灯明をテーマにしたキャンドルの手作りWSを皮切りに、8月末までに「お寺ヨガ」3回、般若心経の「写経カフェ」を2回開催。9月1日には初めて、仏道における香りをテーマにしたWS「香りのこころ」を開いた。同月28日は3回目の写経カフェを開く。気軽さを印象づけるため「~会」「~講座」といった名称は使わず、告知は交流サイト「フェイスブック」などを活用。これまでのWSには市内外から幅広い世代が参加し「意外と堅苦しくない」「静かで雰囲気が良かった」など好評という。
泰峻さんが寺子屋WSの理念として掲げるのは、仏道の「自利利他(じりりた)」という言葉。自利は己を高めること、利他は他者のためとなること-という意味で、仏道で尊い行いとされる。そこで普賢院は「国際協力の寺」を掲げ、参加費の一部を充恵さんが以前勤務していた国際協力NGOを支援する「NPO法人アーユス仏教国際協力ネットワーク」に寄付している。また充恵さんのアイデアで、WSの参加者にはフェアトレード(公正貿易)商品で東ティモール、ラオスといった産地のコーヒーやお茶を提供している。充恵さんは国際協力に携わった経験から「参加者が世界に少しでも意識を向けてくれたら」と願いを込める。
寺子屋WSは不定期開催で、今後は「終活」をテーマにしたり、子ども向けの内容のWSも検討しているという。少子高齢化、過疎化の影響で地域コミュニティーが衰退する中、泰峻さんは「寺子屋WSの参加者がご縁を温め、人と人との絆を確かめられる場にしたい」、充恵さんは「お寺は仏事の時にだけ来る場所と思われがちだが、もっと気軽に足を運んでもらえたら」と話している。

東奥日報社

9月2日(水)13時43分

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