日航機墜落30年 坂本九さんの長女、思い重ね歌う

「ありふれた日常の輝き、父の命が教えてくれた」

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日常の輝きを歌に乗せて-。520人が亡くなった日航ジャンボ機墜落事故は12日で30年。事故で犠牲になった坂本九さん=当時(43)=の長女で歌手の 大島花子さん(41)は、日々を生きる大切さを歌で伝え続けている。二度と過ごせない父との日常は「何でもない瞬間」にこそきらめきがあったからだ。昨年 末に発表した初アルバムでは父のカバー曲を収録し、父の曲に30年間の思いを重ねて歌った。

11歳の夏。今も忘れられない光景がある。事故前日のことだった。

セミの鳴き声と高校野球の中継が聞こえる中、父と庭掃除をした。父は「お、見ろ見ろ、暑いけど汗がぽたぽた垂れてくるのが面白いよね」と笑顔。いつも子 供を楽しませようとする父らしい言葉だった。ありふれた日常の一コマだが、「どんな瞬間でも、それが輝きを放つことがある。父の命から教えてもらった」。 それを伝えるのが歌を歌い続ける理由だ。

歌手デビューから10年以上がたち、初めて制作したアルバムには、父が作詞作曲を手がけた「親父」を収録した。事故前年のコンサートで、みんなが知っている「九ちゃんスマイル」を見せず、真剣な顔で歌う父の姿を見て、子供ながらに涙が止まらなかった。

厳しかった父との日々を息子が遺影の前で懐かしむ内容。自分は娘ながらも、歌うことで歌詞の中の父を思う息子、すなわち坂本さん本人に感情移入できる「不思議な歌」という。

「もう直接は対話できないけど、歌いながら父と会話をしている気がする」

現在も心の傷は癒えておらず、御巣鷹の尾根に行くのは怖い。8月12日も特別な日ではなく、いつか日常として「普通」に過ぎていくようになることを望む。

ただ、それでも父に伝えたい。「自分は今、歌を歌えて幸せです」

出典:経済新聞

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