延命治療は望まない意思を遺して生きるリビングウィル
NPO法人 日本リビングウィル協会
東京都千代田区岩本町1-2-11
渡東ビルディングアネックス207
http://livingwill.jp/
2003年、歯科医師の柳田智恵子さん(日本リビングウィル協会 代表)
は「自分の死に方は自分で決めよう」をモットーに設立。
望まない延命治療をあらかじめ自身の意思として署名し遺しておく活動を中心に、
遺された人の負担を軽減するため、死と葬送に関する情報の提供、相談、
生活者の視点での旅立ちの企画と勉強会を開催。
会員同士の交流や支援活動、葬送に関するサポートなども行っている。
どういう死を望むか、自らの意 思をリビングウィルとして遺す
尊厳死について考えたことがありますか?
回復の見込みがないと診断されたとき、人工呼吸器などを使った延命治療を受けるかどうか。
最終的な判断を迫られるのは、本人ではなく、そのまわりにいるもっとも身近な身内である。
「大切な人を悩ませないためにも、どういう死を望むか、自らの意思をリビングウィルとして遺しておいてください」
と語る柳田智恵子さんは、10年前にたった一人で協会をつくり、リビングウィルがいかに大切かを伝えながら、
普及活動に務めてきた。
「延命は、治すための治療というよりも、死なせないための治療。その治療によって生かされている状態は、生きているとはいえない」 柳田さんが、こう考えるようになったのは、「明治生まれで、いつも凛としていた憧れの祖母が、入院中、看護師から赤ちゃん言葉で話しかけられていた」様子を見て、「死に向かっていく人の尊厳が守られていない」と感じたことがきっかけ。
最近では、痛みをとることで穏やかに最期を迎えられる緩和ケアを望む人が増えているといわれているが、実際、どれほどの人が希望どおりの治療を受けられているかはわからない。だからこそ、元気なうちに、少なくとも延命治療を望むかどうかについての意思表示を明確にしておくことが大事なのだろう。
死んだ後の希望も伝えておく
ビングウィルには、自分が死んだ後のことも含まれる。「死んだ後は、子どもや家族に迷惑をかけたくない」とは、誰もが思うことかもしれないが、そう思っている割には、具体的には何も考えていないと
いう人が多過ぎる。葬儀、お墓、相続のことなど、生前に決めておいたほうがいいことは山ほどある。
「協会には、葬儀社や不動産コンサルタント、税理士など、様々な相談に対応できるだけのスペシャリストが揃っています。まずは、気軽に話をしにきてください。全力でサポートします」という協会の存在自体が頼もしい。
また、こうした協会の活動を通じて、死んだ後のことに対して不安を抱えている人が多いと感じた柳田さんは、広い意味での終活のヒントになれば、と「かたづけの必要性」を1冊の本にまとめて出版。
それが、『人生のかたづけ整理術』(ダイヤモンド社)である。
「葬儀や相続などについての慣習や決まり事が、いまだに色濃く残る地域もあるため、このような本の需要があるのは、都市部だけだろうと思っていたのですが、思いの外、地方の方たちからの反響が大きかったので
驚きました。地方に住む人のほうが、堅苦しいしきたりや慣習をできるだけ簡素化していきたいと思っているようです」
協会の活動を通じて同じ悩みを共有できる仲間が見つかる
リビングウィルを遺すのに、適当な年齢というのはないが、
「まだ、比較的若くて元気な60歳ぐらいで準備を始めるとよい」と、柳田さんはいう。
とくに、「男性は、女性に比べて、死ぬことを考えたがらない傾向があるので、健康なうちに、意思を遺しておいてほしい」と助言する。
60歳ともなれば、ある日突然、パタッと倒れて亡くなるということも起こり得る。「個人事業主やワンマン社長としてバリバリ働いているような人であればなおさら、リビングウィルとともに遺書を残しておくべきでしょう。
死んだ後に、混乱を招くことのないように整えておくことが、遺された家族に対する思い遣りです」
協会では、様々な講習会や勉強会を開催し、会員同士が気軽に交流をはかれるような機会を提供している。同じような考えや悩みを持った人と出会える可能性は意外と高い。
たとえば、葬儀については、「ライブハウスでの音楽葬にしたい」「ビールサーバーを設置して飲みながら送ってほしい」など、オリジナルな形を希望する人が多い。協会では、できる限り、個々の要望に応えていきたいと考えている。自分の死に様と、死後のことを考えて意思を遺すリビングウィル さっそく考えてみてはいかが。