江戸川病院 整形外科 慶応義塾大学医学部 研究員奥野 祐次さん
奥野 祐次さん
ガン治療と痛みの緩和が専門。研究結果を発表した論文は、今年アメリカの医学雑誌『NatureMedicine』に掲載された。 ラジオ番組(かつしかFM『僕はお医者さん』毎週水曜18 〜19時)では体の仕組みを分かりやすく解説している。
現在も多方面で活躍中。
私の「エンディングノート」
Q.人生の最後に食べたいもの(最後の晩餐)
イタリアン料理
Q.人生最後に行きたいところ
新婚旅行で泊まったハワイのホテル
●祖母
●伊東先生(高校時代の物理の先生)
●研修医の時に受け持った患者さん
母、中村勘三郎さん、浦辺粂子さん
Q.生まれ変わったらなりたい職業
作家・コラムニスト
残りの人生を豊かに過ごす
ガンであることを受け入れて自分の人生を生きて欲しい
日本人の死因のトップであるガンの治療を専門とする医師の奥野祐次さん。
これまでに多くのガン患者を診てきたが、その人のガンが治るものか、治らないものなのかは、検査をした時点でたいてい分かるという。どちらとも判断がつかないケースは1割ほどしかない。
だからこそガンを治すには早期発見が大事なのだが、「あなたのガンは、いくら治療をしても恐らく治りません。5年後まで生きる確率は非常に低いでしょう」。医師からそう告げられたら、あなたはどうするだろうか?
「多くの人が『あなたはガンです』といわれて、初めて『自分は死ぬんだ』と気づく。人は自分がいつまでも生 きられるように錯覚しがちですが、誰でも残された時間は限られています。ただ、残された時間が普通の人よりもうちょっと明確に予想できるだけ。
本来、誰にでも死は訪れる。まず、それを受け入れることです」と、奥野先生。そして、これまでの自身の 経験から、苦しい思いをして治療を続け、病院で一生を終えることはして欲しくない、という。
そのために、できる限り日帰りか一泊の治療で、症状をコントロールしながら、ガンを小さくしたり痛みを取り除く方法をとっている。「苦しいガン治療に耐えても命が数カ月伸びる程度なら、病院ではなくご自宅で、症状を抑えつつできるだけ元気に、自分の人生を生きて欲しい。そんなふうにお話しすることにしています」
最近では、在宅医療を行う医師も増えている。病院での治療をやめて家に帰ると、それだけで生き生きとして、食事が食べられるようになる人もいる。そして、病院で延命治療を施した人より自宅で過ごした人のほうが、亡くなるときも安らかなのだとか。
ガンと告げられたら、残された人生をどう生きるか。それを選ぶのは、自分自身だ。「いろんな価値観があるので、それでも諦めないで治療を選ぶ人もいます。それもその人の人生ですから。どちらにしても、困っている症状をできるだけ減らすように努力します」